「吉原仲之町見染」
桜満開の吉原に下野の絹商人次郎左衛門が見物にやってくる。次郎左衛門はあばたの不男であったが、真面目な商人である。偶然通りかかった兵庫屋花魁の九重、八ッ橋の道中がやってくる。
見事な道中に田舎者の次郎左衛門はすっかり魂を奪われてしまが、たまたま八つ橋が次郎左衛門を振り返り妖艶な意味深な笑みで微笑みかける。
「立花屋見世先」・「大音寺前浪宅」
八ッ橋に夢中になった次郎左衛門は廓に通いつめ、八ッ橋を身請けする気でいた。次郎左衛門は上品な客であったので八ッ橋も丁寧に接していた。八ッ橋の親代わり釣鐘権八は立花屋に金をせびりに来て断られ、金蔓の八ッ橋を身請けされては困ると八ッ橋の情夫繁山栄之丞のところにいく。栄之丞は、話を確かめるために兵庫屋へ出かけることにする。
「兵庫屋二階遣手部屋」
八ッ橋は栄之丞から問い詰められ、恨みごとを言われ困惑し泣き出してしまう。栄之丞との縁を切るかと詰め寄られ、次郎左衛門に愛想づかしすることを承知する。
「兵庫屋八ッ橋部屋縁切り」
次郎左衛門の前に、八ッ橋があらわれ無愛想の限り。がらっと変わった八ッ橋の態度に、周囲はなだめすかしたりするが身請けはされないという。縁切話に次郎左衛門は男の姿に気づき意味を察した。八ッ橋は悪びれもせず
「栄之丞は間夫」と公言し、万座の中で馬鹿にされた次郎左衛門は「花魁、そりゃぁちとそでなかろうぜ・・」と帰っていく。
「立花屋二階」
四ヶ月後、次郎左衛門は八ッ橋を呼び 「今日から初会として遊ばせてくれ」といい、申し訳ないことをしたと気がとがめていた八ッ橋も不義理を詫びる。
わだかまりは解けたかに見えが・・・・。人払いをした後、 次郎左衛門は八ッ橋に向かって「この世の別れじゃ、呑んでくりゃれ・・・よくも恥をかかせてくれたな」という。八ッ橋が逃げようとすると、その裾を踏みつけ名刀籠釣瓶で後ろから一太刀。すさまじい切れ味で、八ッ橋に留めを刺し、燭台を持ってきた下女も切捨て燭台の明かりに刀をかざす。
「籠釣瓶は・・・・よく切れるなぁ」と見入る。
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