雪の降る逢坂山の新関のほとりに先帝仁明天皇の御陵があり、遺愛の桜を移して寵臣四位少将良峯宗貞が菩提を弔っている。桜は雪中に返り咲いているが先帝崩御を哀しむあまりに薄墨色に咲いたのを小野小町の歌によって色を増した縁で小町桜とも墨染桜ともいう。その小町が三井寺参詣のために関を通りかかり宗貞に会いに来た。二人は恋人同士だった。小町は宗貞の弟安貞が謀反人に殺されたことを語り、関守関兵衛が怪しいことを語り、小町を小野篁の元に走らせる。関兵衛こそ謀反の首魁大伴黒主で今宵年を経た桜の木を切って護摩を焚くと天下をとれるという占いによって小町桜を伐採しようとする。伏見の遊女墨染という女が現れて黒主を口説く。これが小町桜の精で安貞の恋人でもあり黒主を滅ぼそうとするのだった。
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